災害という今回の福岡のイノベーションスタジオのテーマの難しさと解決すべき課題の多さに今回の案件が『かつてなく短期間で予算のない中での難易度の高い案件』である認識に至った。

特にコンテスト形式であることがネックである。起業して軌道に乗っていない起業は製品コンテストに参加することは非常にリスクが高い。

コンテストは「勝たないと何も残らない」「今後に繋がるか不透明」という点が不安感を煽る。

それを抜きにしても難しい案件であることを示していく。なおなるべく素人でもわかるように専門用語は置き換えできる部分は置き換えていく

災害時と通常時のサーバーの混雑具合が不安要因

災害が起きた場合、通信が集中することはこれまでの災害の経験からも明白である。

災害時の状況に対応させて専門的になればなるほど、通常に使用されることが少なくなる。

今回の課題の一つである「通常から使用しているツールでないと操作に不安を覚える」「慣れていないのでミスが起きやすい」「ツールを扱う人の技量に差が出る」という問題点が、専門的になればなるほど解決できない。

よって災害時にも役に立つアプリケーションは「日常でも使用してもらえる利便性の高さ」が要求される

さらにそれはサーバーでデータを集める機能を持っていることが望ましい。普段から使ってもらっているなら、サーバーが混雑してもあらかじめ災害時の契約締結をして増強してもらえるオプションを企業と締結しておけば良い。

通常時に使用が少ないアプリケーションとサーバーでは初動のアクセス集中に耐えきれないことが起きることを想定すべきだし、普段からアプリケーションを利用しているユーザーが多いことはかなり重要である。

ここを解決できないと「赤字事業になりスタートアップでは維持が難しい」ことになる。

災害が起きてからGoogleやAppStoreからダウンロードして使ってもらおうにも、ダウンロードを行うことでのアクセスの集中や、アップデート作業をされるとこれも通信の集中を招くことになる。このことも「日常からダウンロードしておいてもらうこと」が重要である。

これらの要件をみた場合、「サーバーへの過負荷テスト」「アプリケーションの知名度」などスタートアップでは厳しい要件がいくつもある。

物資マッチングや避難場所の確認

日常的に物資マッチングを行わせるというのはかなり難しい。いくつか思うところでは「メルカリ」などのフリーマーケットアプリ。日本国内では禁止されている「Uber」、使いようによっては物資のマッチングである「AirB&B」、そして巷の「出会い系アプリ」であろうか?

これらのメルカリ以外は国内では普段は使うことを敬遠されるアプリケーションがマッチングを簡単に可能にさせる。

 

それと同時に避難場所の確認を行うアプリケーションの機能を同居させないといけない。単純な話ではない。

その昔、「買い物代行をお願いできるアプリケーションの依頼」があった。国内に数多く存在する「買い物難民のため」ということで依頼があったが「地域をどこにするか?」「どこまでカバーするか?」という問題点を1業者ではカバーできる範囲が限られていることもありお流れになった。

 

数多くそして広域に設置されるであろう避難所を把握することも同質の問題を抱えている

日本全域をカバーするアプリケーションにすると地域専門性のカバーが難しくなり、地域性を高めてローカル性を出しての特定地域を根ざすと日常的に使用してもらう数の母数も減ってしまう。

かといって買い物代行と同質のサービスである「物資のマッチング」の流通網を即席で作成するのが災害時の応対でもある。

買い物代行サービスは買い物難民が存在する地域や、宅配のお弁当を展開しているサービスなどの利用率が高い地域では有効に機能する可能性が高いが、それ以外の人が圧倒的に多いので通常から使用されることへの課題は克服できない。

 

あらかじめ「避難場所の把握」を行っているのであるから「避難場所を拠点としたサービス網」の展開をビジネスモデルとして何らかの「マッチングサービス」を展開していく、という過程を経ることができていればアプリケーションでのサービス展開も含めて防災を意識したモデルシステムを展開できるかもしれない。

熊本・新潟を基準にした規模のツールでは今後の激甚的な地震に対応は不可能

今回の熊本地震の対応を行った内閣府の方が作成した報告書でも「国・県・市レベルで情報を一元化して共有する必要性」を説いている。

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今回の課題である「アプリケーション」で国や県が利用するレベルの大規模なものまで構築すると、単純な話で「物理的・人員的に巨大なシステムを必要とする」ことになります。

とてもじゃないですが、コンテストレベルで作る作品の域を超えています。

御用聞きのメーカーさんから3次受けでも億単位の発注案件です。

そしてこれらのシステムの規模が「熊本・新潟レベルに対応したレベルの規模」にしても今後、それが役に立つとは限りません。

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県には県。市には市。ベンチャーにはベンチャーで出来る「身の丈を知る」ことを内閣府の初動に関するレポートでも述べています。

仮に「熊本を基準にした物理的な対応でどこまで可能か?」という表をわかりやすく作成されているので引用させて頂きます。

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はっきり言って「規模が違い過ぎる」という感想を抱かざるえません。

今回の課題の大きさや範囲、量が窺い知れます。

 

これらの情報を踏まえてアプリケーションの開発に取り組んで行くことになるのですが、最初はローカル色の強い、そして「人の行動を変えていく」機能と日常的に使用してもらえるアプリケーションでないと、課題の解決や目的の達成はベンチャーが取り組むこと自体が難しいと言えるでしょう。

防災には「災害が起きる前に地域のコミュニティを強化しておく」ことが重要であることを提言しておきます。

 

引用 平成28年度熊本地震に係る初動対応の検証レポート