賃貸借契約を公正証書にする:滞納に備える「強制執行認諾」の基礎
滞納対策を調べていると、「契約を公正証書にしておくとよい」という話を目にすることがあります。公正証書は公証役場で大家自身が手続きを進められる備えのひとつですが、賃貸借では使える場面に限りがあるとも言われます。この記事では、公正証書と「強制執行認諾文言」の基礎を、一般的な観点から整理します。
1.公正証書とは何か
公正証書とは、公証人が作成する公的な文書です。公証役場で、当事者の合意内容を公証人が確認して作成するため、後から「そんな約束はしていない」という食い違いを防ぎやすい、信用力の高い書面として知られています。
賃貸経営では、賃貸借契約そのものや、滞納が生じた後の支払いに関する合意(分割払いの取り決めなど)を公正証書にする例が紹介されます。
2.「強制執行認諾文言」がカギ
公正証書が滞納対策として語られる最大の理由が、強制執行認諾文言(強制執行受諾の意思表示)です。これは「約束どおり支払わないときは、ただちに強制執行を受けても異議はありません」という趣旨の文言で、これが入った公正証書は、一定の要件のもとで裁判の判決を経なくても強制執行の前提(債務名義)になりうるとされます。
3.賃貸借では「使える場面が限られる」点に注意
つまり「公正証書にしておけば明渡しまで安心」とは限りません。未払い家賃(お金)の回収と部屋を返してもらう(明渡し)は別の話、という前提で考える必要があります(→記事38)。どこまで備えになるかは、必ず公証役場・専門家に確認してください。
4.公証役場で自分で進める流れ(一般的な例)
公正証書は、大家自身が公証役場に相談して進められます。あくまで一般的なイメージですが、おおむね次のような流れで説明されることが多いです。
- 契約内容・合意したい条件を整理する(賃料・支払期日・滞納時の取り決めなど)
- 公証役場に相談し、必要書類・段取りを確認する
- 公証人が文案を確認・作成する
- 当事者が公証役場で内容を確認し、署名・押印などを行う
手数料や必要書類、当事者の出頭の要否などは公証役場により案内が異なります。具体的な進め方は管轄の公証役場に直接確認するのが確実です。
5.向いているケース・慎重に考えたいケース
公正証書は万能ではなく、手間や費用もかかります。一般的には次のように整理されます(実際の判断は専門家へ)。
- 検討に値するとされる例:金銭の支払い(滞納分の分割合意など)を確実な形で残したいとき
- 慎重に考えたいとされる例:明渡しまでを期待しているとき/相手の協力が得られず作成自体が難しいとき
「何のために公正証書にするのか」を整理したうえで、要否を専門家・公証役場に相談しましょう。
6.アプリは「契約・金銭条項の記録」を助ける
大家賃貸ノートは、公正証書の前提となる契約内容や金銭条項の記録を整えるところをサポートします。賃料・支払期日・保証の内容・合意の経緯を整理しておけば、公証役場や専門家に相談するとき、条件をそのまま伝えられます。
公正証書は、大家が自分で動ける予防法務の選択肢のひとつです。ただし「お金」と「明渡し」は別、という点をおさえ、要否は専門家・公証役場に確認するのが安全です。まずは契約内容を整理することから始めましょう。
大家賃貸ノートは、賃料・支払期日・保証内容・合意の経緯を契約単位で記録できます(公正証書の作成・手続き代行は行いません)。整理しておけば、公証役場や専門家への相談もスムーズです。データは国内に保存し、端末ロックで守ります。まずは無料でお試しください。
App Storeで大家賃貸ノートを見る※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の公正証書の要否・文案を指南・代行するものではありません。公正証書の作成・強制執行に関する判断は、公証役場・弁護士・司法書士などにご相談ください。要件は制度改正で変わりうるため、最新情報を確認してください。
1980年生まれ、福岡県出身。西南学院大学卒業。3児の母。子育てをしながら義母の不動産会社のサポートを行っている。