トラブルが起きる前に。大家が契約時に自分でできる「予防法務」まとめ
家賃滞納や退去トラブルへの対応は、起きてからでは選べる手段が限られます。一方で、契約の段階で備えておけることは意外と多く、しかもその多くは大家自身が自分で進められる「予防法務」です。この記事では、トラブルが起きる前に大家ができる備えの全体像を一般的な観点から整理します。各テーマの詳しい解説記事へのハブとしてもお使いください。
1.「対応」より「予防」が効く理由
滞納や退去のトラブルが起きてから動こうとすると、内容証明・督促・少額訴訟といった負担の大きい手段しか残っていないことがあります(→記事37 督促の進め方、記事38 少額訴訟・支払督促)。
一方、契約の段階でできる備えは、費用も手間も小さく、しかも大家自身で進められるものが中心です。「起きてから慌てる」より「起きにくくする・起きても対応しやすくする」ほうが、結果的にずっと楽になります。以下、代表的な備えを順に見ていきます。
2.① 家賃保証会社への加入を前提にする
滞納対策として最も現実的とされるのが、家賃保証会社の利用です。入居時に保証会社への加入を契約の前提にしておくと、万一の滞納時に定められた手続きで対応してもらえる場合があります。
- 加入を「任意」ではなく契約の条件として扱うかを検討する
- 保証の範囲・更新・手続きの流れを契約前に確認する
- 保証会社・保証人の契約内容を記録しておく
詳しくは 記事41「家賃保証会社の仕組みと選び方」 で解説します。
3.② 連帯保証人と「極度額」を正しく設定する
連帯保証人を立てる場合、2020年の民法改正で個人の根保証には「極度額」(上限額)の定めが必須とされるようになりました。極度額の記載を欠くと保証が無効になりうる、という点は予防法務の基本です。
4.③ 契約を公正証書にする選択肢
滞納に備える手段として、賃貸借契約や金銭に関する取り決めを公正証書にしておく方法があります。特に強制執行認諾文言付きの公正証書は、後の回収局面で意味を持つことがあるとされます。
公正証書は公証役場で大家自身が手続きを進められるため、予防法務として知っておきたい選択肢です。ただし、賃貸借では使える場面が限られるという指摘もあり、向き不向きの判断は専門家・公証役場への相談が前提です。詳しくは 記事40「賃貸借契約を公正証書にする」 へ。
5.④ 特約・重要事項・緊急連絡先を整える
契約書まわりの整備も、地味ですが効く予防法務です。
- 特約:原状回復の負担区分など、後でもめやすい点を明確にしておく(→記事12 特約。ただし無効になりうる条項もあるため注意)
- 定期借家の事前説明書面:手続きが抜けると普通借家になる落とし穴(→記事10)
- 緊急連絡先・連絡手段:入居者本人以外の連絡先を、同意を得て取得・記録しておく
- 入居者情報の適切な取り扱い:個人情報保護の観点も忘れずに(→記事16)
6.⑤ 「記録の習慣」そのものが予防になる
意外に見落とされますが、日々の記録を残す習慣こそ、最も基本的な予防法務です。契約条項・入金状況・やりとりの経緯が整理されていれば、いざトラブルが起きたときに「いつ・いくら・どんな約束だったか」をすぐ示せます。
逆に、記録が散らばっていると、正当な主張があっても証拠を集めるのに苦労します。備えとは、特別な手続きだけでなく「ちゃんと残しておくこと」でもあるのです。
7.アプリは「備えの記録」を助ける
大家賃貸ノートは、こうした予防法務の記録を整えるところをサポートします。契約条項・保証会社/連帯保証人・極度額・緊急連絡先・特約などを物件や契約にひもづけて残せるため、必要なときにすぐ確認できます。
予防法務の多くは、専門家に確認しながらも大家自身が主体的に進められるものです。契約時の備えを整え、記録を残しておく ── それが、トラブルが起きても慌てないいちばんの土台になります。
大家賃貸ノートは、保証会社・連帯保証人・極度額・緊急連絡先・特約などの「備え」を契約単位で記録できます(契約書作成や通知・手続きの代行は行いません)。整理しておけば、いざというとき専門家への相談もスムーズです。データは国内に保存し、端末ロックで守ります。まずは無料でお試しください。
App Storeで大家賃貸ノートを見る※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の契約条項の作成・判断や法的手続きを指南・代行するものではありません。契約・保証・公正証書の設計は、宅建業者・弁護士・司法書士・公証役場などにご相談ください。
1980年生まれ、福岡県出身。西南学院大学卒業。3児の母。子育てをしながら義母の不動産会社のサポートを行っている。